『カニスの血を嗣ぐ』
浅暮三文・著
嗅覚を極度に発達させた男が、殺人事件の謎を「匂い」から解き明かしてゆく
男の名前は阿川。彼の嗅覚は盗聴器のように働く。彼にとって匂いとは、印象ではなく風景。犬たちの行動だけでなく、一般社会に隠されたさまざまな真実さえ、あからさまに伝えてくれる。ある日、阿川は死んだ犬に付いていた匂いをバーで出会った女に嗅いだ。だがその女も急死。いきずりの関係で終わった女だが、なにか不可解なものを感じた阿川は、匂いを頼りに、死の真相を追い始めた……。「嗅覚」をテーマにした異色の長篇ミステリ。
●浅暮三文(あさぐれ・みつふみ)
小説家。第8回日本ファンタジーノベル大賞最終候補を経て、1998年第8回メフィスト賞『ダブ(エ)ストン街道』でデビュウ。2003年第56回日本推理作家協会賞を『石の中の蜘蛛』で受賞。他作品に『実験小説ぬ』『ぽんこつ喜劇』、エッセイ『おつまミステリー』など多数。著作はイタリア、韓国で翻訳され、中学校教科書に採用された。日本文芸家協会、日本推理作家協会会員。
『量子少女(クォーク・ガール)(4)』
町井登志夫・著
コスモがその力を使ったはずなのに記憶にない……改変ループの世界に閉じ込められた!?
藤川コスモ。彼女は右手を振って量子の流れを変形し、過去の一時点から現在を別の状態に作り替えることができる。ぼくはその改変を察知できる……はずなのだが。何かがおかしい。コスモと何を話していたのか、直前までの記憶がない。何を改変したのか、コスモ自身も気づいていないみたいだ。明らかに異常事態! クラスメイトの一人が小学生時代に殺されたことになっていた。現職の総理大臣が入れ替わった。謎を解こうとすると空に亀裂が入る。過去を変えようとしても、ループに乗って改変後の世界に戻ってくる……。どうしてこんなことに? 元の世界に戻すと、何が起きるんだ?
量子に働きかけ、現実を作り替えてしまう量子少女・藤川コスモ。時空の歪みを修復できる斉藤真綾。そして、量子の波の影響を受けない“ぼく”こと犬飼研。歴史を改変し、歴史を修復する『歴史部』の3人が主人公の長篇SF小説、第4弾。電子オリジナル作品。
●町井登志夫(まちい・としお)
作家。1964年生。日本SF作家クラブ会員。1997年、『電脳のイヴ』で第3回ホワイトハート大賞優秀賞を、2001年に『今池電波聖ゴミマリア』で第2回小松左京賞を受賞。他の作品に『爆撃聖徳太子』『諸葛孔明対卑弥呼』『倭国本土決戦』『改革者蘇我入鹿』『細菌汚染』などの他、『夢幻∞』『九十九神曼荼羅』シリーズがある。