• 2024/1/19
  • 『異人類白書』
     大学の研究室で「あるもの」を日夜調査している柴門博士と助手。それは、人間社会にこっそり棲息する「異人類」なのでした。しかもネッシーやツチノコのようなUMAといった類のモンスターではなく、風呂やトイレの流し口に入り込む「穴居人」、視界の外に存在する「盲点人」など、ヘンテコな人々。 言葉の綾というかトンチでひねり出した屁理屈のような存在なのですが、とにかく「彼らはそこにいるのだ!」と仮説を立てて徹底的かつ強引な調査を開始。すると……実在するんですねぇ、これが。笑 とっても楽しいドタバタSFコメディ連作短篇集です。

    『広告放浪記』
     作家になる前は広告代理店で営業職に従事していた浅暮先生。本作はその時の経験を元に書かれた、半ば私小説ともいえる作品です。なんとなく就職してはみたものの、特にやりたい仕事でもなく、成績をごまかしながらダラダラと過ごす毎日。そんな新人営業社員アサグレの身に起きた転機とは……。かっこわるくてせつなくて、でも本当は自分の夢や希望、目標と呼べるものがほしい……そんなやるせない青春の想いが詰まった素敵な作品です。時代は変わっても若者の悩みは同じ。若い読者にこそ、読んでほしいですね。そして!今回の電子版表紙の「旅ガラス」イラストを描いているのは、なーんと浅暮先生ご本人なのです。本編の中でも広告に自分でイラストを描くというシーンが出てきますが、これはびっくり。

    『似非エルサレム記』
     壮大なSF小説。常に紛争の地である「エルサレム」に人格が芽生え、争い事ばかり起きるこんな場所は嫌だ、とばかりに地面を這って逃げ出す……というもの。突然に聖地が地響きを立てて移動し始めて、世界中の人間たちは大騒ぎ。そういった滑稽な様子の描写も本作の特徴ですね。人類の愚かさを暗に秘めた、風刺小説とも言える作品。是非!この機会に読んでみてください〜。

    『夜を買いましょう』
     本作もある意味、風刺小説と言える作品。グローバリズム、世界経済を強烈に皮肉っています。主人公は製薬会社の研究員。インドネシアのジャングルの奥地で、見たこともない珍しいキノコを採取します。強い催淫作用があるため、強精剤として売りだそうとしますが、研究を進めるうちに「人間の頭に植え付けると睡眠を吸収する」という機能を発見します。つまりこのキノコを摂取すれば数時間「寝溜め」したのと同じ効果、不眠不休で生活できるのです。タイム・イズ・マネーと言いますが、果たしてこのキノコは人間社会にどのように受け入れられるのでしょうか……。何でも商売に変えてしまう人間の怖さ、ブラックユーモアが味わえる一風変わった作品です。

    『魔法使いゴーホーム』
     かつて『週刊アスキー』に連載ののち、小学館さんから『悪夢はダブルでやってくる』というタイトルで刊行された作品、今回の電子版では改題しての登場です。実験小説、と呼称したほうがよいのでしょうか。物語が進行していくにつれ、読者に対してクイズやくじ引きなど様々なアクションが仕掛けられる、かなりヘンテコな小説です。お話自体は『アラジンと魔法使いのランプ』を下敷きにしており、「願いを叶えよう」と言う魔法使いに対して、へそ曲がりの主人公が「嫌だ!」と拒否して逃げ回る、というスラップスティック・コメディ小説となっています。

    『やや野球ども』
     試合描写もガッツリ、専門用語もばんばん登場する、野球好きのための野球小説です。しかも高校野球でもプロ野球でもなく、オッサンたちが集まった社会人草野球チームというのが渋いですね。少しだけSF要素も含まれておりまして、実はこのオッサン連中、全員が「何かしらの超能力」を持っているのです。日常生活においても、野球にも役に立ちそうにない、しょーもない能力なのですが、使いようによっては意外な効果を発揮して……。野球好きには必読だと思います。是非どうぞ〜。

新刊案内

異人類白書

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NEW『異人類白書』

浅暮三文・著

日常生活で起きる不思議現象は、未発見の「異人類」の仕業だった!?

 置いていたはずのものが見つからないのも、電話が混線して遠い声が聞こえるのも、塗りたてのペンキに手形がついているのも……すべては「異人類」のせいだった! とぼけた博士とお茶目な助手が、まだ見ぬ異人類を求めて奔走する。連作ユーモア短篇小説集。

●浅暮三文(あさぐれ・みつふみ)
小説家。第8回日本ファンタジーノベル大賞最終候補を経て、1998年第8回メフィスト賞『ダブ(エ)ストン街道』でデビュウ。2003年第56回日本推理作家協会賞を『石の中の蜘蛛』で受賞。他作品に『実験小説ぬ』『ぽんこつ喜劇』、エッセイ『おつまミステリー』など多数。著作はイタリア、韓国で翻訳され、中学校教科書に採用された。日本文芸家協会、日本推理作家協会会員。

広告放浪記

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NEW『広告放浪記』

浅暮三文・著

大阪の街を北へ南へうろつき、飛び込みセールスを繰り返すの日々

 1981年、大阪。弱小広告代理店の新人営業社員アサグレは、今日もサボって喫茶店。大学を卒業し、一人前の大人のつもりでいたが古い慣習を残す大阪の広告屋の世界で、その自尊心は木っ端みじんにうち砕かれた。かっこわるくてせつなくて、夢や希望に溢れない、自伝的サラリーマン物語。

●浅暮三文(あさぐれ・みつふみ)
小説家。第8回日本ファンタジーノベル大賞最終候補を経て、1998年第8回メフィスト賞『ダブ(エ)ストン街道』でデビュウ。2003年第56回日本推理作家協会賞を『石の中の蜘蛛』で受賞。他作品に『実験小説ぬ』『ぽんこつ喜劇』、エッセイ『おつまミステリー』など多数。著作はイタリア、韓国で翻訳され、中学校教科書に採用された。日本文芸家協会、日本推理作家協会会員。

似非エルサレム記

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NEW『似非エルサレム記』

浅暮三文・著

人間同士の争いに絶望した聖地エルサレムは、その場から逃げ出すことにした

 エルサレムは土煙を上げながら移動を続けた。それはまるで巨大な船が大地に波を立てて進むようであった。陸をさまよう巨大な氷山にも思えた。丘の上の人々は、かつて旧市街があった穴から、少しずつ遠ざかるその姿を眺め、誰も言葉を発することができなかった。(本文より)
 聖地が動いた。1匹の犬とともに。そして人間たちと「土」との長い長い物語が始まる……。癒しに満ちた大人のための寓話。

●浅暮三文(あさぐれ・みつふみ)
小説家。第8回日本ファンタジーノベル大賞最終候補を経て、1998年第8回メフィスト賞『ダブ(エ)ストン街道』でデビュウ。2003年第56回日本推理作家協会賞を『石の中の蜘蛛』で受賞。他作品に『実験小説ぬ』『ぽんこつ喜劇』、エッセイ『おつまミステリー』など多数。著作はイタリア、韓国で翻訳され、中学校教科書に採用された。日本文芸家協会、日本推理作家協会会員。

夜を買いましょう

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NEW『夜を買いましょう』

浅暮三文・著

睡眠をコントロールするキノコで世界経済が変わる!?

 製薬会社の新薬開発担当の遠藤は、インドネシアの小島でとてつもない強精作用のあるキノコを発見した。意気揚々と帰国したが会社は外資に合併され彼の居場所はなかった。だがこのキノコの能力は強精だけではなかった。人の睡眠を蓄積し、コントロールする働きがあったのだ。遠藤らはキノコによる世界初の睡眠ビジネスをもくろむ。一見、大成功に見えた新ビジネスだったが、遠藤の胸には不安が去来する。なにか忘れている気がする。とても重要ななにかを……。新境地エコノミカル・ファンタジー長篇小説。

●浅暮三文(あさぐれ・みつふみ)
小説家。第8回日本ファンタジーノベル大賞最終候補を経て、1998年第8回メフィスト賞『ダブ(エ)ストン街道』でデビュウ。2003年第56回日本推理作家協会賞を『石の中の蜘蛛』で受賞。他作品に『実験小説ぬ』『ぽんこつ喜劇』、エッセイ『おつまミステリー』など多数。著作はイタリア、韓国で翻訳され、中学校教科書に採用された。日本文芸家協会、日本推理作家協会会員。

魔法使いゴーホーム

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NEW『魔法使いゴーホーム』

浅暮三文・著

缶詰を開けると魔法使いが登場! そして逃走劇の果てに待っていた結末は……

 長期休暇を家でゆっくり過ごそうと、主人公はマーケットで食料を購入した。家に帰り、早速カンヅメを開けると、「ポン」という音とともに、魔法使いが出現した。魔法使いは、ひとつだけ望みを叶えてやるというお決まりの言葉をはくが、カンヅメの中身で部屋を汚された主人公は怒り心頭。意地でも魔法使いの言うことを聞こうとしない。そして、しつこい魔法使いから逃げ出した。追う魔法使い。実は、魔法使いにも望みを叶えてやらねばならない深刻な理由があった。逃走は世界を駆け巡り、意外な人物が登場し、そして、もっと意外な結末を迎える……。作中にさまざまな仕掛けを施したスラップスティック実験小説。

●浅暮三文(あさぐれ・みつふみ)
小説家。第8回日本ファンタジーノベル大賞最終候補を経て、1998年第8回メフィスト賞『ダブ(エ)ストン街道』でデビュウ。2003年第56回日本推理作家協会賞を『石の中の蜘蛛』で受賞。他作品に『実験小説ぬ』『ぽんこつ喜劇』、エッセイ『おつまミステリー』など多数。著作はイタリア、韓国で翻訳され、中学校教科書に採用された。日本文芸家協会、日本推理作家協会会員。

やや野球ども

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NEW『やや野球ども』

浅暮三文・著

ボンクラたちが草野球チームを結成!? 恋も仕事もぱっとしない奴らの涙と笑いの成長物語

「巨人軍を倒してみないかい?」フリーのデザイナーとして、日々スーパーの安売りチラシなどを手がける地味な毎日を送る石動誠。行きつけのバー「ファイブ・クォーター」のマスターの音頭で、常連たちと草野球チームを結成することになった。日頃の運動不足がたたってろくに練習もはかどらない彼らだが、じつはそれぞれ秘密の力を備えていて……。草野球史上最弱ナインの運命はいかに? 打倒、巨人軍!? 仕事も恋も中途半端な男たちが結成した草野球チーム、目指すはアマチュアトーナメント優勝。大人が夢中になる青春野球小説。

●浅暮三文(あさぐれ・みつふみ)
小説家。第8回日本ファンタジーノベル大賞最終候補を経て、1998年第8回メフィスト賞『ダブ(エ)ストン街道』でデビュウ。2003年第56回日本推理作家協会賞を『石の中の蜘蛛』で受賞。他作品に『実験小説ぬ』『ぽんこつ喜劇』、エッセイ『おつまミステリー』など多数。著作はイタリア、韓国で翻訳され、中学校教科書に採用された。日本文芸家協会、日本推理作家協会会員。

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