• 2022/7/27
  • 『啄木が殺した女』
     石川啄木が残した文章から浮かび上がる“殺人の告白”という思い切った題材のミステリ。愛好家達が隠されたそのメッセージを解き明かしていく一方で、現実世界でも殺人事件が起きてしまい、二つの時間軸で物語が進行していきます。詩や日記の引用も多く、かなりのボリュームで読み応えのある大作です。

    『獣医栃尾彩子』全2巻
     これは珍しい、獣医さんが主人公のミステリ作品。女医さんである栃尾彩子が勤める榎動物病院へ担ぎ込まれる、犬、猫、鳥といったペットたち。彼らを診察し、飼い主の話を聞いていくうちに事件性が浮かび上がり……。ミステリとしてそれほど凝ったトリックや仕掛けがあるわけではないですが、人情話が絡められていて、ライトミステリの入門編として最適。短篇7話×2冊という分量で、空き時間に少しずつ読み進めるのにぴったりです。かつて火曜サスペンス劇場でドラマ化(主演:山口智子)もされています。オススメ!

    『セミョーノフは二度殺せ』
     20世紀前半、ロシア革命直後の極東シベリアを舞台にした冒険サスペンス小説。大日本帝国の傀儡国家・ザバイカル共和国。超短命に終わったのですが、その統領であったのがグリゴリー・ミハイロヴィチ・セミョーノフという人物。彼の暗殺事件をめぐる陰謀に、在シベリア日本人が巻き込まれてしまいます。家族を人質に取られ、赤軍の言いなりになってセミョーノフ暗殺に荷担する男たち。やがて彼が金塊の山を隠し持っているという噂が立ち……。歴史の大きなうねりの中で必死に生き抜こうとする人々の群像劇。『ゴールデンカムイ』にも共通するようなダイナミックさもあり、これは必読でしょう。オススメ!

    『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』
     矢樹純先生のデビュー作、長篇ミステリが電子で復刊しました! Wikipediaに書かれているあらすじを引用すると、おぞましい因習の残る青森県P集落へ20年ぶりに帰郷する「私」は、途中の新幹線で同じ場所を目指す心理カウンセラー・桜木と出会う……うーん、ネタバレになるのでこれ以上は書けませぬ。汗 とにかく作中には、読者の予想を裏切る仕掛けが盛りだくさんでして、ページを繰るごとに次々と新事実が明らかになっていきます。単なる連続殺人事件モノとは言えない、かなり特殊な作品です。未読のミステリ・ファンは是非!この機会にダウンロードしてみてください〜。

新刊案内

啄木が殺した女

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NEW『啄木が殺した女』

日下圭介・著

石川啄木が遺した詩や日記の中には、彼が犯した“殺人”の告白が隠されていた!?

“石川啄木詩情の旅”ツアー最終日、滞在先の盛岡のホテルで、参加者の一人・折原香奈子が殴殺された。凶器は南部鉄の水盤。だが捜査は難航し、事件は迷宮入りの様相を濃くしていた。一方、新進作家・千波由紀はツアー仲間と、啄木のある謎の研究を続けていた。その矢先、死んだ香奈子が啄木日記の欠落部分を入手していたことが判明、事件は意外な展開を見せ始めた。やがて浮上する、啄木の恐るべき秘密とは? そして第二の殺人が……。綿密な資料調査と取材をもとに贈る、歴史&本格推理の傑作。

●日下圭介(くさか・けいすけ)
1940年和歌山県生まれ。早稲田大学第一商学部卒。1965年朝日新聞社に入社。1975年『蝶たちは今…』で第21回江戸川乱歩賞を受賞。1982年『鶯を呼ぶ少年』『木に登る犬』で日本推理作家協会賞・短編賞を受賞。その後作家活動に専念し、『黄金機関車を狙え』などの近代史ミステリーで新境地を開く。

獣医栃尾彩子(1) 猫が嗤った

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NEW『獣医栃尾彩子(1) 猫が嗤った』

日下圭介・著

愛すべき犬、猫、鳥と交差する人間の殺意……あなたを謎解きの知的興奮に誘う本邦初の動物ミステリ

 榎動物病院の美人獣医・栃尾彩子のもとに、火傷の猫を抱いた少年がやって来た。偶然通りかかった民家の焼け跡で拾ったという。翌日、今度は刑事が訪れた。その少年に放火の疑いがあるという。不審に思う彩子は少年の無実を証明すべく、調べ始めた。すると、家人が旅行中でべットの猫しかいない状況下で、室内から出火したことが判明。いわば現場は密室だったのである。彩子の疑問はさらに強まった。全てを焼失し、悲しみにくれているはずの被害者の子供たちの、意外な明るさと笑顔。果たして誰が、何の目的で、いかなる方法で放火したのか?(「炎を吐いた猫」) 
 連作短篇集「獣医栃尾彩子」シリーズ第1弾。日本テレビ系列「火曜サスペンス劇場」では「女動物医事件簿」(主演:山口智子)としてドラマシリーズ化された。

第一話 耳を噛む犬
第二話 嗤う鳥
第三話 猫の中身
第四話 憂鬱な犬
第五話 蛇のような……
第六話 猫は見たか
第七話 炎を吐いた猫

●日下圭介(くさか・けいすけ)
1940年和歌山県生まれ。早稲田大学第一商学部卒。1965年朝日新聞社に入社。1975年『蝶たちは今…』で第21回江戸川乱歩賞を受賞。1982年『鶯を呼ぶ少年』『木に登る犬』で日本推理作家協会賞・短編賞を受賞。その後作家活動に専念し、『黄金機関車を狙え』などの近代史ミステリーで新境地を開く。

獣医栃尾彩子(2) 証人は猫

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NEW『獣医栃尾彩子(2) 証人は猫』

日下圭介・著

事件の鍵を握るのはもの言わぬ動物……持ち前の好奇心と行動力で、美貌の獣医探偵が難事件に挑む

 8月も終わりに近いある夜、町外れの公園で殴殺事件が起きた。だが容疑者の浅岡は同時刻、瀕死の猫を抱いて榎動物病院に駆け込んでいた。高層マンションのベランダから落ちてしまったと言う。そのマンションと事件現場は、かなり距離がある。鉄壁のアリバイに捜査は頓挫。だが直後、美人獣医・栃尾彩子にある閃めきが生まれる。猫だけが知っていた完全犯罪のトリックとは?(「宙を舞う猫」)
 連作短篇集「獣医栃尾彩子」シリーズ第2弾。日本テレビ系列「火曜サスペンス劇場」では「女動物医事件簿」(主演:山口智子)としてドラマシリーズ化された。

第一話 ジャズが好きな犬
第二話 人みしりな犬
第三話 鳩の告発
第四話 三本脚の犬
第五話 宙を舞う猫
第六話 ペンションに来た犬
第七話 隻眼の犬

●日下圭介(くさか・けいすけ)
1940年和歌山県生まれ。早稲田大学第一商学部卒。1965年朝日新聞社に入社。1975年『蝶たちは今…』で第21回江戸川乱歩賞を受賞。1982年『鶯を呼ぶ少年』『木に登る犬』で日本推理作家協会賞・短編賞を受賞。その後作家活動に専念し、『黄金機関車を狙え』などの近代史ミステリーで新境地を開く。

セミョーノフは二度殺せ

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NEW『セミョーノフは二度殺せ』

日下圭介・著

広漠たるロシアの雪原を血に染めて絶望への行軍が続く……謀略に運命を踏みにじられた日本人たち

 ロシア革命、激動の時代。ロシアの各地で激しい内戦が繰り広げられていた。ボルシェビキ革命派=赤衛軍と、それに対抗する反革命派=白衛軍の争いが主だが、英仏米日などが派兵した上、赤軍側にはパルチザンがついたため、混沌とした様相を呈していた。そんな中、反革命勢力の軍事指揮官・セミョーノフ狙撃さるの報は、白衛軍のみならず、日本帝国陸軍をも震撼させた。政治的混乱に巻き込まれた邦人居留民の運命は? そしてセミョーノフがかき集めたという莫大な金塊のゆくえは? 長篇冒険サスペンス。

●日下圭介(くさか・けいすけ)
1940年和歌山県生まれ。早稲田大学第一商学部卒。1965年朝日新聞社に入社。1975年『蝶たちは今…』で第21回江戸川乱歩賞を受賞。1982年『鶯を呼ぶ少年』『木に登る犬』で日本推理作家協会賞・短編賞を受賞。その後作家活動に専念し、『黄金機関車を狙え』などの近代史ミステリーで新境地を開く。

Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件

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NEW『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』

矢樹 純・著

不可解な死体の謎を解くのは……他人の秘密をのぞかずにはいられない窃視症患者!?

 その村では、いじめは娯楽の役割を果たしていた。そして、村の決めごとで、いじめの対象とされている“サント”とは……。おぞましい因習が残る、青森県P集落。大学の同僚教授・三崎忍に同行し、二十年ぶりに帰郷する「私」には、苦い思い出の土地だった。途中の新幹線で、「私」たちは同じ場所を目指す心理カウンセラーの桜木と出会う。だが、雪で閉ざされた縁切り寺で「私」たちを待ち受けていたのは、世にも奇怪な、連続殺人事件だった……。長篇ミステリ小説。電子版あとがきを追加収録。

●矢樹 純(やぎ・じゅん)
小説家、漫画原作者。1976年、青森県生まれ。実妹とコンビを組み、加藤山羊の合同ペンネームで2002年、「ビッグコミックスピリッツ増刊号」にてデビューする。『あいの結婚相談所』『バカレイドッグス』などの原作を担う。2012年、「このミステリーがすごい!」大賞に応募した『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』で小説家としてデビュー。2019年に上梓した短編集『夫の骨』が注目を集め、2020年に表題作で日本推理作家協会賞短編部門を受賞する。他の小説作品に『がらくた少女と人喰い煙突』『妻は忘れない』『マザー・マーダー』『残星を抱く』がある。

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